はじめに
「秋の東京芝=瞬発力勝負」。競馬ファンにとってはおなじみのフレーズです。特に天皇賞・秋(東京芝2000m)は「直線ヨーイドン」「切れ味勝負」というイメージが強く、多くの予想記事でも“瞬発力タイプ有利”と語られます。
しかし、果たしてそれは本当に絶対的な法則なのでしょうか?
本稿ではL3(ラスト3ハロン)のラップ分析を切り口に、“瞬発力神話”の実態を整理。さらに天皇賞・秋の過去レースを例に、瞬発力型と持続力型のせめぎ合いを解剖します。
東京芝2000mの特徴
東京競馬場の芝2000mは、スタンド前発走で最初の1コーナーまでの距離が短く、序盤の位置取り争いはシビアです。その後は中盤で落ち着き、直線約525m+ゴール前の急坂が待ち受けるレイアウト。
- スタートから序盤:ポジション争いが激しくなりやすい
- 中盤:ペースが緩んで“溜め”が生まれることが多い
- 終盤:直線L3からのロングスパート戦になりやすい
これが「瞬発力勝負=神話」を生む背景といえるでしょう。
L3ラップで見る“瞬発力”とは?
L3ラップとは
L3=ラスト3ハロン(600〜200m区間)のラップを指します。
- L3が11.5秒以下 → 明確な瞬発力戦
- L3が12秒前後で持続 → スタミナや底力が問われる
- L2(ラスト2F)が極端に速い → “ヨーイドン型”
つまり、L3の推移=レースの質を映す鏡なのです。
東京芝2000mの傾向
過去10年の東京芝2000m重賞を俯瞰すると、
- 直線に入ってからの加速性能(L3→L2の伸び)が勝敗を分けるケースが多い
- ただし、G1クラスではL4(ラスト4ハロン)から速いラップを刻み続ける持続力戦になる年もある
→ 単純な「瞬発力=切れ味」だけでは片づけられないのです。
天皇賞・秋をL3ラップで振り返る
例1:2017年(キタサンブラック)
- 道中スローからのL4ロングスパート
- L3以降も緩まず、持続力勝負に
- 結果:瞬発力型よりスタミナ&粘り強さでキタサンが押し切り
例2:2019年(アーモンドアイ)
- L3=11.6、L2=11.3という明確な加速
- ラスト2Fでのトップスピードが決定打
- 結果:瞬発力神話の典型的証明
例3:2022年(イクイノックス)
- 前半から締まった流れ
- L3=11.7、L2=11.5と速い持続戦
- 結果:高次元の持続力+瞬発力を兼備した馬が勝利
例4:2023年(イクイノックス連覇)
- ペースが上がり切らず直線瞬発戦
- L3=11.3、L2=11.1の鋭い加速
- 結果:瞬発力型+操縦性の高さが完勝要因
神話をどう捉えるべきか
上記の例からわかるのは、
- 瞬発力型が強い年も確かにある
- しかし持続力型が勝つ年もある
- 要は「ペース設計」「道中の仕掛け」で質が変わる
つまり「秋の東京=瞬発力神話」というよりは、
“瞬発力を問われやすいが、持続力が不要になるわけではない”
と表現するのが実態に近いでしょう。
馬券戦略に落とし込むなら
1. 瞬発力型人気馬の“妙味消失”に注意
直線加速が武器の人気馬は過剰に支持されやすい。
→ 道中締まった流れやハイラップ戦では脆さを見せる。
2. 持続力型の“拾いどころ”を探す
ハイペース想定時は、むしろ持続力型に妙味がある。
特に「前走厳しい流れで粘った馬」は狙い目。
3. L3ラップ予測をレース前に描く
- スロー濃厚:瞬発力型◎
- ミドル以上:持続力型浮上
- 馬場状態(稍重〜不良)で瞬発力が削がれる場合も考慮
まとめ
- 秋の東京=瞬発力神話は“部分的に真実”
- 実際の勝敗はL3ラップの質(加速か持続か)で決まる
- 天皇賞・秋はその年ごとに傾向が異なり、瞬発力型と持続力型のバランスを読むことが重要
競馬予想で「東京=瞬発力」と決めつけるのは危険。
L3ラップを軸に“今年の質”を読み解く視点こそ、妙味ある馬券戦略につながるのです。
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