はじめに
秋のクラシック最終戦・菊花賞(京都芝3000m)。
「最も強い馬が勝つ」とも言われるこのレースは、かつて“ステイヤーの登竜門”と呼ばれました。
しかし近年、その様相は変わりつつあります。
本稿では、過去20年の勝ち馬の血統を比較しながら、
「今なお菊花賞は“ステイヤー決定戦”なのか?」を検証していきます。
① 菊花賞の特徴と舞台設定
- コース:京都芝3000m(外回り→内回り)
- 直線:約404m+坂あり
- 3コーナーからロングスパート戦
持続力とスタミナが問われる一方で、京都コース特有の“立ち回り”も重要。
つまり単純なスタミナ比べではなく、ペース配分・瞬発力・位置取りのすべてをバランスよく備えることが求められます。
② 2000年代前半:「ステイヤー血統黄金期」
| 年 | 勝ち馬 | 父系 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 2002 | ヒシミラクル | サッカーボーイ(ノーザンダンサー系) | 長距離特化の持続型 |
| 2003 | ザッツザプレンティ | ダンスインザダーク(サンデー系) | スタミナ+末脚型 |
| 2004 | デルタブルース | ダンスインザダーク | 重厚スタミナ型 |
この頃はまさに“ステイヤー決定戦”。
父ダンスインザダーク(サンデー×欧州スタミナ)が連続好走。
ラップも前半スロー→後半ロングスパートで、長く脚を使える血統が圧倒的に有利でした。
③ 2010年代:「サンデー後継の万能型時代」
| 年 | 勝ち馬 | 父系 | 傾向 |
|---|---|---|---|
| 2011 | オルフェーヴル | ステイゴールド(サンデー系) | 天才型万能 |
| 2013 | エピファネイア | シンボリクリスエス(ロベルト系) | パワー+持続型 |
| 2015 | キタサンブラック | ブラックタイド(ディープ全兄) | スピード持続型 |
| 2017 | キセキ | ルーラーシップ(キングマンボ系) | 持続力+瞬発力融合 |
この時代から明確にトレンドが変化。
「いかにも長距離血統」というより、中距離GⅠでも通用する万能血統が主流に。
理由は大きく3つ。
- 3000m戦でもペースが上がり、消耗戦よりも“持続ラップ戦”に
- 馬場高速化により、欧州型スタミナ血統の出番が減少
- サンデー後継(特にディープ・ステイ・ブラックタイド)が適性拡大
→ 菊花賞=「純ステイヤー」よりも「万能中距離型+ロングスパート耐性」の時代へ。
④ 近年(2020年代):持続力×スピードのハイブリッド
| 年 | 勝ち馬 | 父系 | コメント |
|---|---|---|---|
| 2020 | コントレイル | ディープインパクト | 三冠達成。瞬発+操作性型 |
| 2021 | タイトルホルダー | ドゥラメンテ(キングカメハメハ系) | 前傾ラップで押し切り型 |
| 2022 | アスクビクターモア | ディープインパクト | 持続力+先行力型 |
| 2023 | ドゥレッツァ | ドゥラメンテ | 欧州的持続力の再評価 |
近年はディープ系とキングカメハメハ系(ドゥラメンテなど)の2強構造。
特に2023年のドゥレッツァは、「欧州スタミナ+スピード血統」が融合した理想的なタイプ。
→ 現代の菊花賞は「ステイヤー=スロー耐久型」ではなく、
“速い持続ラップを走り切れる馬”=モダン・ステイヤーが勝つ時代です。
⑤ 血統トレンドを整理すると
| 時代 | 主流血統 | 特徴 |
|---|---|---|
| 2000年代前半 | ダンスインザダーク系、欧州スタミナ系 | 純ステイヤー型 |
| 2010年代 | サンデー後継(ディープ、ステイ) | 万能型+瞬発力 |
| 2020年代 | ドゥラメンテ・ディープ系融合 | スピード持続型 |
昔の菊花賞=「3000mを走り切るスタミナ」
今の菊花賞=「速い流れを最後まで落とさない持続力」
血統的には、ディープインパクト×欧州牝系、またはドゥラメンテ×サンデー母系といった「両立型」が理想形です。
⑥ 菊花賞はまだ“ステイヤー決定戦”なのか?
結論から言えば、形を変えたステイヤー決定戦です。
かつての「耐久型ステイヤー」ではなく、
今は「高速馬場を3000m持続できるスピードステイヤー」。
つまり、
- スピードの持続力
- 精神面の強さ
- 配合バランス
この3点が揃った馬こそ、現代の“ステイヤー”と呼ぶにふさわしい存在です。
まとめ
- 菊花賞は「純粋なスタミナ比べ」から「スピード持続力決戦」へ進化
- 2000年代=ダンス・ステイ系、2010年代=ディープ系、2020年代=ドゥラメンテ系
- 現代の勝ち馬は「芝中距離GⅠでも通用するスピード型ステイヤー」
- 血統的にはサンデー×欧州スタミナの融合が黄金パターン
“長距離を走り切る力”の中身が変わっただけで、
最も強い馬が勝つという格言は、今も菊花賞に生き続けています。
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